5422) ヒナヒゴタイ Ⅲ
* この記事は、前の項目の 5421) ヒナヒゴタイ Ⅱの続編である。
平戸島南部にある「上段の野」(*A*)に着いたら、目の前の山の原っぱの中に背の高いピンク色の花を付けたものを見つけ、それがヒナヒゴタイ(*B*)であると確信した。
秋風が少し強く吹いて雲っていたが、その時は分厚い雲の間からたまたま日が覗いていた。ヒナヒゴタイのほか、オケラ(*C*)やヤマハッカ(*D*)、ヤマジノギク(*E*)の花を野原の下の方で見てまわり、山に登りだしたら、ビックリするものに出会った。ムラサキセンブリ(*F*)がここかしこに咲いていたのだ。ヒナヒゴタイもあちこちに見られた。急に、山の上に真っ黒な雲が移動してきて、いかにも雷が鳴りそうな雰囲気。すぐに山を下りた。ただ、この間に、ものすごい数のヒナヒゴタイの花の写真を撮っていた。
ヒナヒゴタイは、花の時期は今回は10月の下旬だったが、一般には10~11月とされている。花色はムラサキ色からピンク色のもので、花はアザミ類(*G*)の花に似ている。互生する葉は羽状に5~8対の裂片に裂けることもあり、この場合はアザミに似る。葉縁には荒々しい鋸歯がある。
日当たりのよい草原に生え、高さは2mに達するものもある。茎はシュンと直立し、上部でよく枝分かれしている。茎には縦に溝が見られるが、しばしば狭い翼があるという。
ヒナヒゴタイ(*B*)は日本での分布域が狭く、佐賀県を除く九州各県のみである。,生育環境の変化によって生育状態に著しい消長がみられるようで絶滅の危険性が高いという。環境省のレッドリスト2012では『絶滅危惧ⅠA類(CR)』であり、この長崎県では『絶滅危惧Ⅱ類(VU)』である。
この日は、「上段の野」に近い「佐志岳」に次回 登ってみようと思い、佐志岳登山口まで行ってみた。ここで、近くに住むおばあさんから悲しい話を聞いた。
かつては、この「佐志岳」には多くのイトラッキョウ(*H*)があったそうだが、現在までに卑劣な盗掘によってほとんどなくなっているという。かつては、それを防ぐために若い地元の方が交代でこの時期には見守りガードをしていたそうが、みんな高齢化して今は出来なくなったという。
凛とした美しい野草の花を見て鑑賞するのは素晴らしいことなのだが、「盗掘」は絶対に許されない。絶滅したら、もう二度と見られなくなるし、永遠にこの地からは消えてしまうことになるのだ。
最近では、九州管内から多くの野草ファンがこの地に訪れてくるらしいい。20年前頃には、見守りガードとして、現場で見た(望遠鏡で)盗掘の人の車の番号を控え、平戸大橋で検問していたが、今でもやっているのだろうか?
今は、望遠機能付きのデジカメも普及していることだし、証拠写真でも撮って、一つの橋しかない「平戸大橋」あたりで役所の人が(ん! ボランティァでもいいから)摘発すべきだろう。
これらの稀な野草は重要な『平戸の宝』なのだから。